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江戸時代300年の平和で、戦国時代は忘れ去られた。野山を駆け巡った戦国武将たちの息吹や、その生き方は、『山城』にその痕跡を窺うことができる。ドローンの空撮や3Dキャドを使った歴史地理学的な手法で、戦国の乱世の実像に迫って見た。 |
悲劇の城 備中・高松城 | |
高校時代、山岡荘八の「徳川家康」全巻をなんど読破したことか。お陰で成績は急降下。辛く厳しい日々であった。今回、岡山市のRVパークに宿泊したが、なんと近くに備中高松城趾があった。早速ドローンで撮影していると暇そうな団塊世代のオッサン達と仲良くなり、歴史の話で盛り上がった。そうして備中松山城を勧められ、山奥へ行くこととなった。上左は、高松城付近の鳥瞰図。こんなに広いところを水攻めするとは? とにかく溜め池の多いところだ。上中は、本丸付近。上右が、水攻めの実態。なんともはや、長期の籠城は困難だ。左下が、復元図。下中は、現代の再現。のんびりムードだ。下右、案内板。付近は市街地となり、穏やかな庶民生活が続いている。はるかに昔の話だ。 | |
『備中高松城の水攻め』・・・本能寺の変→秀吉の機略が冴えた! 山岡荘八「徳川家康」より抜粋 「右府さまのおいでなさる前に、戦を終らせておいた方が、お手柄でござりましょうが」 「というと、ここで安国寺に、一歩譲れというのか官兵衛は」 「譲れとは申しませぬ。が、つねに相手に希望を持たせて交渉をつづけてゆく…… これが掛引のコツだと申上げているので」 「ワッハッハッハ、これはよい。まさにその通りだ。さすがに黒田官兵衛は知恵者だわい。まさにその通り……」 しかしその時には秀吉の眼も頭も、全然官兵衛の上にはなかった。 何分にもその時日を費しすぎたこんどの戦であった。清水宗治のたてこもる高松城へは、足守川、高野川の二川をせきとめて大きな湖を作り、一切外界との連絡を断ってしまってあるが、高野川の向うの日差山には毛利の吉川、小早川の二軍が、三万の大軍をひっさげて救援にやって来 ているのであった。 黒田官兵衛の言うとおり、信長が西下して来たのではあとがうるさいし、といって、毛利方の申出をきびしく拒んで城兵を乾千(ひぼし)にしたのでは、あまりにも大人気ない。 (何とか名案が……)と、軽い会話のうらでは絶えず鋭く思案している秀吉だった。 その秀吉が、いま、彼の本陣のおいてある石井山の、のぼりにかかろうとする一の木戸の柵門に細作(さいさく・密使)を発見した・・・。 とらえた相手は もう、おかしいほどおとなしくうなだれたままだった。 密書は明智光秀から、毛利輝元とその叔父吉川元春、小早川隆景の両家にあてたもので、「信長を本能寺に、信忠を二条城に、それぞれ討取ったゆえお知らせするという意味らしかった。」 (光秀が信長父子を討取る……) 冷やりと背筋に、自刃をあてられたような想いがしたが、それはすぐに可笑しさこ変った。 何分にも捕まった密使の態度が他愛なさすぎる。ニセ盲が敵の陣近くを駈けて歩くなど……そ れほど急いだと思えば思えぬこともなかったが、それよりもわざわざ捕まって秀吉を動揺させ、急いで和議をすすめようというあがきに違いない。 (なにぶん、城兵五千に、餓死がせまっているのだからなあ) 秀吉は、相手がすっかり斬られる気になっているのを確めて、一層その感じを深めた。 「これ、何で黙っているのだ。生命は助かりたくはないのか」 「助かりたい……とは思いませぬ」 「そうか。そう聞くと助けたいのがわしの癖でな。よし、与右衛門、この者を山の下まで連れて行かせて放してやれ。盲目がよくばそれで通すがよし、不便であったら眼あきに戻って、気の向く方へ去らせてやれ」 「はい。立てッ」 高虎がまた縄尻をとってニセ盲を引立てた。 「わしは、ここで、直ちに毛利勢と和し、わが生涯を賭けて光秀と一戦する」 みんなが、固くそれに領くと、 「しかし、この覚悟、わしがしたとは言わぬかよい。みながわしにすすめた故、わしは止むなく起ったのだと、世間に触れてくれ。この事が味方のうちより敵を出きぬための第一策だ」 一瞬黒田官兵衛がニヤリと笑ったようだった。 「その方、これより安国寺恵瓊(えけい)がもとに飛ばせ。・・・火急お目にかかりたいと……よいか、これは口上よりもなるべく簡単な、自筆の書面がよいぞ」 「よいかの、ここでは宗治の生命ひとつで、毛利方もこの秀吉も顔が立つか立たぬかの仕儀になった。この事をまず貴僧の胸に納めておいて、貴憎はこのまま高松城へ赴くのじゃ」 「えっリ 何と仰せられまする。愚僧が、このまま清水宗治がもとへ」 「さよう」 秀吉は、じっと視線を恵瓊に据えたままで、「この秀吉、清水宗治を、さすがは音に聞えた名族毛利の忠臣と、心の底より感服している。いや、何も隠すことはない。ここで和議の成ると成らぬとの利害の差をこまかく宗治に説くがよい。安芸・備前・備後、備中、伯者、出雲、石見、隠岐の合計百六十二万石。というが、これは表向きでの、九州には、豊前・豊後から肥後にまで、大きな勢力をもって毛利一族を狙う大友氏が控えている。これへの備えは寸時もおこたれぬ。…・・それゆえ、東へ向けて動かし得る軍勢の数は、この秀吉のそれにも及ばぬ。ここで互いに意地を張り、和議の機会を失うことは、毛利家のために忠ならずと、この秀吉が申したままを宗治に打明けるがよい」 「ウーム」 と恵瓊は息をつめて秀吉を見返した。 「のう、秀吉も武将、宗治があっぱれな心は分りすぎるほどに分っている。それゆえ、宗治が自決に香華(こうげ)を噌ろう。むろん城に籠もる五千の生命はそのまま助けるが、その他に、毛利方から割譲を申出ている五カ国のうち、二カ国だけは宗治が忠死に免じて受け取るまい。よいか、こう申せば、宗治は類いまれな忠臣ゆえ、必ず主家のため、五千の生命のために自決する。自決を見届けた上で、早速に和議をまとめ、公儀(信長)への取りなしはこの秀吉が生命にかけても致す。これで毛利が末は万々歳と申し開かせよ」 聞いているうちに、恵瓊はガタかタと全身が震えて来た。 策、策といいながら、秀吉のそれは決して小さな策ではなくて、どこまでもきびしくこまかい理性の上の計算であった。 それにしても清水宗治が、主家のためと説けばすすんで自決し、この難関に打開の道がつくと 見ている眼の確かさはおそろしい。恵瓊が考えても宗治とはそのような男であった。 いや、或いは秀吉は、恵瓊もまた、こうした順序でこう説けば、この使いをする男と、きちんと計算してあったのかも知れない。 「どうじゃ安国寺、舟の用意はしてあるぞ。蛙ケ鼻から、すぐに城へ赴かぬか。ここらが貴僧の働き所だと思うがのう」 恵瓊は思わず数珠をくって頭を下げた。「すべてこの場は御大将の御知恵のままに」 「動いてくれるか」 「動かさずに、おかぬ方と、骨身にしみて分りました」 「そうか、それは芽出度い。お礼を言うぞ安国寺、毛利家のため、織田家のため……というよりこれは、日本国のため、秀吉のためになあ」 「さ、では出発を祝うて、一献」 さながら、自分の家臣を使者に出すような口調と態度で、秀吉は手ずから恵瓊の盃をみたしてやった。 「のう官兵衛、安国寺が引受けて呉れてよかったぞ」 「仰せのとおり」 官兵衛は相変らず頬から微笑を消さずに、「これで毛利家の士道は一段とかがやき渡り、清水宗治が名は武将の手本として、永遠に歴史の上に残りましょう。お芽出度う存じまする」 と、恵瓊を煽った。 「呉々も宗治にな、この秀吉が惜しんでいたと伝えて呉れよ」 (秀吉とは、こうした男なのだ……) 惜しんでいるのも心から、殺そうとするのも心からと思われる。 盃が済むと、否応なしに恵瓊は再び、蛙ケ鼻へ引き立てられた。 蛙ケ鼻へやって来ると、百九十町歩を満々と湖水に替え、この水上には、すでに一般の軍船が用意され、彼の到着を待ちうけている。陽はカーッと水上に照りつけて、水中に浮んだ孤城を痛ましく照出し、その向うの猿掛山の左には毛利輝元の本陣が見え、右には吉川元春の旗が緑をうずめて望見される。 安国寺恵瓊は案内でその仮屋に入ってゆ〈と、従者が燭をともす間、ひっそりと湖上に浮いた高松城を見ていた。高松城には一つの光もない。いちめんに油を流したような静けさで、にぶく淀む水面に、千古の星が点々と映っている。 恵理は何か切なくなった。(この静寂の底で、小ざかしい人間どもが、好智をかざして殺し合わねばならぬとは……) 何のために? 何をのぞんで……? |
屋山城主吉弘氏と榮法寺の由来 | ![]() |
戦国大名大友氏の勇猛果敢な家臣吉弘氏一族の本拠は、北九州を臨む国東半島、その都甲谷にある屋山城にあり、大内や毛利への最前線基地でした。引きつづく戦いで多くの将兵が命を落とされた。その頃、当山榮法寺は薩摩の武士大畠九兵衛(僧祐心)により建立されたとあります。戦乱の中、彼は何を思って出家したのでしょうか? | 屋山城を 3D復元! ![]() |
都甲史の謎 第2号より |
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足助城 復元 |
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山城には魅力がある。ほとんどが山頂付近にあり絶景が広がっている。 しかし、なにより魅力的なのはそこが戦国武将たちの男の匂いがぷんぷんと感じられるからだ。勝利か敗北か、勝者か死かの選択の場である。だから、山城には男たちの知恵が凝縮している。現代の男たちもそうありたいものだ。 |
曲輪や高櫓など忠実に復元されており、山城研究の参考となる。 |
愛知県豊田市 現地調査 |
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月山 富田城 |
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子供の頃、雑誌に山中鹿之助が連載されていた。なんとも勇敢で素敵な武者なので、とても憧れた。後に、山陰の大名尼子氏の家臣と知ったが、大河ドラマの毛利元就では尼子経久を演じた緒形拳の武者振りに感動した。そこで月山富田城を訪れた次第。 | 短時間のため 登城できなくて、残念至極。再訪問したい。 |
島根県安来市 広瀬町 |
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